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国際薬剤疫学会(ICPE)情報

第22回 国際薬剤疫学会 Report (06/08/24-27)
小管 美樹仁 (日本イーライリリー株式会社)/ 北村 重人  (くすりの適正使用協議会)
D ポスターセッション


ポスターセッション

講演と並行しポスターセッションが行われ、3日間で合計約500題のポスターが公開された。英国のGPRDデータベース等のPopulation databaseを使用したコホート研究、ケースコントロール研究の演題が目立ち、観察研究へ利用可能な本邦での保険データベース整備の必要性を改めて認識した。また、従来通りAERSやPEMに代表される欧米各国の自発報告データベースを用いたシグナルを検出の手法に関する発表も多く、本邦でもデータベースの有効利用の観点からの、自発報告を基にしたデータベースの整備も望まれる。
  市販後研究をデザインする際に参考となり得る発表も多く、ポスターのコピーを入手し得たものについては、今後の海外情報研究会等で利用したい。

 
 今回くすりの使用適正協議会が構築した使用成績調査database(DB)を使った研究の成果 "Effect of Concomitantly Used CYP3A4 Inhibitors in Patients Treated With Calcium Channel Blockers" をポスター発表する事も参加の目的の一つであった。発表が最終日のため、ポスター掲示の時間も短く、来場者数も前日に比べかなり少なかった。持参したRCJ Guide (2006)はあっと言う間に無くなり、ポスターのhandoutについても持ってゆく人は多かったものの、発表内容の詳細について興味を示し質問してくれた参加者は少なかった。そのなかで外資系(RCJ非会員)の薬剤疫学担当者が、「日本には市販後のDBが無く、思うように仕事が進まず困っている」と言いながら、我々の市販後調査DBに興味を示してくれた。この市販後DBの拡充と利用法の検討を現在進めているが、同時にこのDBの存在を広くアピールすべき時期ではと感じた。尚、同じ会場で協議会の市販後DBを使った研究の成果 ”The Effect of Non-Steroidal Anti-Inflammatory Drugs on Therapy of Antihypertensive Drugs”を、石黒ら(京都大学)がポスターで発表した。
 
 ICPS組織委員会は、毎年優秀なポスター発表に対し表彰 (AWARDS of Poster session)を行っており、今年も1位から3位、3日間で9題が表彰された。授賞したポスターはもちろん外見は見栄えがするものばかりだったが、内容も殆どが大規模データベースを活用し、テーマも最近のトピックス(COX-2, HRT, スタチン)に関した発表が多かった。今後の参考に1位を取った3演題を簡単に紹介する。

AWARDS of Poster session
1) Angiotensinogen M235T Polymorphism and the Risk of Myocardial Infarction and Stroke among Hypertensive Patients on ACE Inhibitors or beta-Blockers
2) Impact of the Withdrawal of Rofecoxib on the Use of Other Analgesics and Proton Pump Inhibitors - A Time Series Analysis in Portugal
3) Statins and the Risk of Lung, Breast and Colorectal Cancer
   

1) Angiotensinogen M235T Polymorphism and the Risk of Myocardial Infarction and Stroke among Hypertensive Patients on ACE Inhibitors or beta-Blockers
背景/目的 有効な降圧剤は色々あるが、患者毎に適した薬剤を予測するのは難しい。そこでACE Inhibitors (ACE-I)・β-Blocker服用と心筋梗塞・卒中の発症リスクの関連性がAngiotensinogen(AGT) M235Tの遺伝子多型のT対立遺伝子により変化するかを解析。
方法 Rotterdam研究(プロスペクティブ・コホート研究)でのpopulation-based DBを使用。6,444名の55歳以上の高血圧患者(1990-2002年)でAGTの遺伝子型を分析。薬剤と遺伝子タイプと心筋梗塞・卒中のリスクの関連性をCox比例ハザードモデルで解析。
結果 ACE-I と AGT遺伝子多型の組み合わせが、心筋梗塞の発症リスクを有意に上げていた(Synergt index(SI): 4.00; 95% CI: 1.32-12.11)が、卒中には有意な影響無し(SI: 1.83; 95% CI: 0.95-3.54)。
結論 AGT 遺伝子の235T対立遺伝子を少なくとも1コピー以上持っている高血圧患者は、 ACE-I治療のメリットは小さい。

2)Impact of the Withdrawal of Rofecoxib on the Use of Other Analgesics and Proton Pump Inhibitors - A Time Series Analysis in Portugal
背景/目的 心血管系への副作用でrofecoxibが市場から撤退したのに伴い、代替となるリスクが少ない鎮痛薬がポルトガルでも必要とされている。COX-2阻害薬の心血管系リスクの警告や市場からの撤退に伴う、オピオイド系鎮痛剤及び非選択的NSADとProton Pump Inhibitors (PPI)との併用状況の変化を調査。
方法 1050万人のPortuguese SICMED database (2002年1月-2005年12月)を用い、服用率はDDDs/1000inh/day (住民1000人・一日当りの処方で決められた一日の用量)から推定した。2004年9月にrofecoxib が市場から撤退後の、非選択的NSAD、オピオイド系鎮痛剤及びPPIの使用傾向を、自己回帰移動平均統合モデルで解析。
結果 2004年9月にはrofecoxibは4.05 DDDs/1000inh/day(COX-2全体は10.29)であった。一方2004年9月を境にDDDs/1000inh/monthが、非選択的NSADでは0.12が6.35へ、PPIは0.61が3.90へ、オピオイド(tramadol)は0.007が0.055へと有意に増加。
結論 rofecoxib の撤退に伴い、その代替として重篤な副作用が懸念される非選択的NSADやオピオイド系鎮痛剤へ処方が変化した。これに伴いPPIの処方の増加が認められた。

3) Statins and the Risk of Lung, Breast and Colorectal Cancer
背景/目的 スタチンの服用と癌発現との関連については、過去のRCTやメタアナリシスと観察研究では結果が異なり、またある種の癌に対する強い予防効果が最近の研究で報告されている。方法論的な問題を念頭に置きながら、スタチンの服用と部位別の癌の発現を解析。
方法 米国の癌化学療法の有効性検証大規模プログラムのDBとMedicareのDBとをリンク。患者の内、スタチン投与を開始した全ての患者群と、そのコントロールの対照群として緑内障予防に他の薬剤の投与を開始した患者を選択。転帰は大腸癌、肺癌、乳ガンとし、解析はCox多変量比例モデルで実施。
結果 スタチン投与群(N=24,517)に比べ、緑内障予防に他の薬剤の投与を開始した患者群(N=7,296)の年齢が若干若かった。しかし、年齢以外の患者の特性はほぼ同一だった。大腸癌、肺癌、乳ガンの調整後のハザード率はそれぞれ0.98 (95% CI 0.70-1.38), 0.91 (95% CI 0.63-1.32), 0.93 (95% CI 0.69-1.27)。尚両群の大腸癌、肺癌、乳ガン発生率は、一般健常人での発症率と同程度だった。
結論 スタチンを処方された高齢者では、大腸癌、肺癌、乳ガンの発症リスクの増加・減少に関し臨床的にはその重大について議論する必要はまず無さそうである。


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